世界遺産を知る
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World Heritage
世界遺産を目指して
「飛鳥・藤原」は、6世紀末期~8世紀初頭に、東アジアの東端に位置する日本列島の中心部において、はじめて中央集権体制に基づく宮都が誕生したことを示す比類のない文化遺産です。それは、当時の中国・朝鮮半島諸国と日本との間で繰り広げられた政治的・文化的交流の所産であり、渡来人の積極的受容による外来の文化の導入と日本に固有の伝統との融合を通じて独自の開花を遂げました。
「飛鳥・藤原」の資産は、奈良盆地の南部に位置する、丘陵に囲まれた飛鳥の小盆地と、その北西に接する藤原の平野部に展開する2つの宮都から成ります。天皇が居住する宮殿に政治権力を集中し、周囲に統治機能をもつ官衙群を順次追加した小盆地内の「飛鳥の宮都」。そして、大和三山に囲まれた平野部を選び、大極殿・朝堂院・内裏・官衙群がひとつの宮殿内に統治機構を集約された「藤原の宮都」です。これら2つの宮都の変遷が、日本列島にはじめて誕生した中国の律令制度を模範とする中央集権体制に基づく宮都の形成過程を示しています。それは、8世紀の平城宮(奈良)、9世紀以降の平安宮(京都)へと続く日本の宮都造営の出発点ともなりました。
2つの宮都は、それぞれ「宮殿・官衙跡」・「仏教寺院跡」・「墳墓」という3つの類型に区分される22の構成資産から成ります。「宮殿・官衙跡」は、中央集権体制が儀式・政治・行政の中心的な場である宮殿において具現したことを示しており、「仏教寺院跡」は、日本初の仏教寺院である飛鳥寺の造営を契機として、有力豪族によって私的な仏教寺院が造営され、やがて中央集権国家を鎮護する国家寺院が成立したことを示しています。また、「墳墓」は、前方後円墳に代表される有力豪族の連合体制を示す墓制から、天皇を頂点とする中央集権国家の墓制へと変化を遂げたことを示しています。
世界遺産とは?
『世界遺産』この言葉は、1972(昭和47)年に採択されたユネスコの世界遺産条約(『世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約』)で登場し、顕著な普遍的価値をもつ、建造物・遺跡・景観・自然などの人類共通のかけがえのない資産をいいます。世界各地に残された貴重な遺産を保護し、次世代に継承していくことは、国や民族などを越えて、私たちが共通して取り組むべき重要な課題です。世界遺産はその内容によって次の3種類に分類されます。
顕著な普遍的価値を有する建築物、遺跡、文化的景観など
顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地など
文化遺産と自然遺産の両者の価値を兼ね備えているもの
2024(令和6)年8月現在、文化遺産が952件、自然遺産が231件、複合遺産が40件、合計1223件が登録されています。このうち、日本には文化遺産が21件、自然遺産が5件あります。
関連リンク
文化庁(日本の世界遺産一覧 | 文化庁 (bunka.go.jp))
ユネスコ世界遺産センター(UNESCO World Heritage Centre)
世界遺産の評価基準
世界遺産に登録されるためには、「顕著な普遍的価値」の証明のため、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている次の評価基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、完全性や真実性の条件を満たし、締結国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要です。
1 | 人間の創造的才能を表す傑作である。 |
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2 | 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。 |
3 | 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。 |
4 | 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。 |
5 | あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの) |
6 | 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。 |
7 | 最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。 |
8 | 生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。 |
9 | 陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。 |
10 | 学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。 |
登録までのプロセス
世界遺産条約関係省庁連絡会議(政府の推薦決定)
推薦書をユネスコ世界遺産委員会へ提出
国際記念物遺跡会議(ICOMOS)で審査(現地調査も含む)
世界遺産委員会で審査・登録の可否を決定